ヘルブルン宮殿と庭園
驚異の噴水仕掛け
ザルツブルクの市街より南へ車で10分ほどのところにあるヘルブルン宮殿では、主役とも言える「水の仕掛け」が、敷地のあらゆる場所で訪れる人々を迎えてくれます。
マルクス・シティクスは、単なる静養するための夏の離宮ではなく、人生を楽しむ娯楽の場となる宮殿を造らせました。ゲストを驚かせ、楽しませ、ときに翻弄するための仕掛けに満ちた庭園は、かつては大司教だけのものでした。今日では、だれでもが公園を散策し、仕掛け噴水を楽しむことができます。庭園の至るところで、無数の泉や噴水から冷たい清水が湧き出しています。
宮殿と庭園の水仕掛け
噴水のカスケードや、雄鹿の角から噴射される水を抜けて、劇場の方へ向かうと、椅子のスツールが置かれた大きな石テーブルがあります。テーブルの中央のくぼみには客のためのワインが冷やされていました。大司教はスツールの下や床から水の吹き出させ、逃げ惑うゲストの様子を楽しんでいたのでしょう。
ギリシャ神話に着想を得た洞窟があります。「ネプチューン洞窟」にはびっくりするでしょう。水で動くブリキの「ゲルモール」が、観察者に向かって目を回し、無礼にも下を突き出してきます。「鳥の鳴き声洞窟」では11種類の鳥の鳴き声を奏でる11のピンローラーが並んでいます。その他「貝殻の洞窟」、「廃墟の洞窟」「鏡の洞窟」と5つの洞窟があり、訪れる人の五感を巧みに刺激します。これらの洞窟には無数の噴水とパイプが隠されています。
水の力で動く仕掛け人形(ウォーター・オートマトン)は、当時の建築技術の高さを物語っており、200体の手作りの人形たちが、機械仕掛けの劇場で絶え間なく金槌を打ち、のこぎりをひき、音楽を奏でながら、ギリシャ・ローマ神話の小さなジャンルの場面とバロック時代の小さな町の暮らしを再現します。
広さ60ヘクタールを誇る宮殿庭園は、美術史家たちから「庭園建築のワンダールーム」とも称されています。芸術的に整えられた区域と、ザルツァハ川流域の自然そのままのビオトープ(生態系保護区域)とが、美しく調和しているからです。
園内の高台にある可愛らしい「モナトシュレッスル(小宮殿)」には、ザルツブルク博物館の民俗学部門が入っており、かつて自然の石切り場だった場所は、シティクスによって劇場として整備されました。こうして1617年には、アルプス以北で初めての屋外オペラ上演が実現した「石の劇場(シュタインテアター)」が誕生したのです。
バロック庭園は、アドヴェントの時期には素敵なクリスマスの雰囲気に包まれます。ヘルブルン宮殿のロマンティックなクリスマスマーケットは11月中旬から行われ、小さいながらザルツブルクで最も美しいアドヴェベントマーケットの1つです。700本を超える針葉樹は10,000個の赤いボールとイルミネーションライトで飾られます。もう1つのハイライトは宮殿のファサードで、24の窓が特大のアドベントカレンダーに変わります。