ホイリゲ
皇帝ヨーゼフ2世は1789年、ウィーンのぶどう農家に「年間 300日以内に限り自家製ワインを小売りし、簡単な食事を供してもよい」という特別許可を与えたのが始まりです。2019年にはオーストリアのUNESCO無形文化遺産に登録されました。
2019年、ウィーンのホイリゲ文化はオーストリアのユネスコ無形文化遺産に登録されました。ウィーンのホイリゲ文化は、主に家族経営で受け継がれている、ワイン居酒屋の社会的文化です。営業時間の自由な選択、自家製ワインの提供、各居酒屋の個性ある料理やメニューなど、厳しいガイドラインをクリアすると、ウィーンホイリゲ協会に所属するホイリゲのうち、約100件ほどのホイリゲが、ユネスコのロゴを掲げることができます。
「今年の」を意味する「ホイリゲ」は、ワイン農家が経営する居酒屋で、自家製ワインを出しています。以前は、秋一番に収穫され仕込まれたワインは、聖マルティン祭の日(11月11日)に初めて開封されていましたが、最近では10月頃には新酒を提供しているワイナリーが増えています。「只今営業中」を示すのに、入り口の軒先に小枝の束が目印としてぶら下げられています。
ホイリゲでの食べ物はシュニッツェルなどの温かい肉料理や、チーズや自家製ハム、ソーセージやバーベキュー、サラダなどがあり、ビュッフェ・コーナーでセルフサービスで買ってくる形式のところもあれば、普通のレストランのように注文して運んで来てくれるところもあります。
ウィーンでは、ホイリゲが最も集中しているのはグリンツィングとその周辺です。その他、地元の人に人気のコーベンツルや、ビーサムベルク山のふもとのシュタンマースドルフ、オーバラー、ヌスドルフなどにもホイリゲが多数あります。
ウィーンのホイリゲで演奏される音楽「シュランメル」はシュランメル兄弟がつくりだしたウィーンの大衆音楽で、ヴァイオリンやアコーディオン、ギターを演奏しながら歌います。 週末には散歩やハイキング帰りに立ち寄る家族連れでにぎわいます。
シュタイヤマルク州のワイン地方に行くとホイリゲはブッシェンシャンクと呼ばれます。食べ物は「ブレッテルヤウゼ」が一般的です。「ブレッテルヤウゼ」とはハム、ベーコン、チーズにパプリカ、ピクルス、西洋わさびやペーストを添えて、板 (ブレッテル) に載せた軽食 (ヤウゼ)です。パンは別料金で頼みます。
子供やアルコールに弱い方にオススメなのは「トラウベンザフト」(ブドウジュース)です。また、ワインを炭酸水で5:5に割って、1/4リットルのジョッキで供されるシュプリッツァー (Sprizer) も人気です。
ブドウ畑に隣接したホイリゲでは、屋内だけではなく縁に囲まれた屋外でもワインとブレッテルヤウゼを友人や家族で楽しむことができます。
熟したブドウがワインへと醸成されグラスに注がれるまでには、それに相応しい時間がかかります。ワインに成熟する前には幾つかの段階があり、それぞれ独特の印象的な風味があります。
モスト(Most) ワインにするため絞ったブドウの果汁。年齢制限もなく、誰にも味わえる健康的なジュースで「ウィーナー・トラウベ」の名で商標登録されています。これは、厳重に品質管理されたウィーン産のブドウのみを使ったものです。
シュトルム(Sturm) 発酵の最中で、まだ不透明な果汁は、これから生まれるワインの初期段階。爽やかでフルーティー、まだ残っているブドウ糖の繊細な甘みが快く、レモネードのように清々しい飲み心地です。通常8月中旬から10月まで出回っていますが、法律上では8月1日から12月31日まで販売してもよいことになっています。アルコール分は最低1%含んでいます。
シュタウビガー(Staubiger) 聖マルティヌスの日(11月11日)前後のワインは、まだ少し濁りがあります(シュタウビック=埃っぽい)。既にアルコール度は高く、甘みはほとんどありません。聖マルティヌスの日の伝統的ガチョウ料理に欠かせないワインです。
ユングワイン(Jungwein) 一番早く完成したワインの新酒が店舗に登場するのは10月末。フレッシュでフルーティー、この時期にしか味わえない新鮮な風味があります。
シュプリッツァー(Spritzer) これは、ホイリゲに欠かせないスタンダードナンバーです。ワインに加えられるのはミネラルウォーター、ソーダ、あるいはレモネード(クラッヘール)などです。この飲み方には、白ワイン、赤ワインの若い酒が最適です。
クラッヘール(Das Kracherl) 発泡性のレモンジュースかラズベリージュースでワインに甘みを加えたもの。「ポンと音がする」という意味のクラッヘールの由来は、発泡性のため、以前用いられていた球形の栓を抜くとき、ポンと音がしたからです。