ナマハゲ(?)も出るオーストリアの荒々しい冬の風習
アドヴェント(待降節)時期に行われる伝統行事に聖ニコラウスとクランプスの祭りがあります。大きな音を立てて繰り広げられるクランプスの祭りには、日本のナマハゲにも共通する鬼たちが登場します。オーストリアではクリスマスから年の変わり目にかけて、多くの神秘的な風習が祝われます。
神秘的なオーストリア
クリスマスの時期にはキリストの誕生を祝うだけでなく、多くの異教的な風習が行われます。中にはとても恐ろしい鬼がでてくる祭りもあります。
オーストリアでは平和な待降節の時期に毛皮を身にまとい、角がある恐ろしい仮面を付けた鬼(クランプス)が子供たちを棒で脅して回るという祭りが12月5日に各地で行われます。しかし、本当はそれ程怖くはありません。実はクランプスは「よい子」にお菓子や木の実をプレゼントしてくれる人気の高い聖ニコラウスの仲間なのです。聖ニコラウスはクランプスと一緒に各家庭を訪ね、良い子たちに小さなプレゼントを与え、悪いことをした子たちには、クランプスが罰を与えます。
バート・ミッテルンドルフの愉快なニコロシュピール
バート・ミッテルンドルフで12月5日に行われる伝統的なニコロシュピールでは、登場人物は長い行列を作り、店から店へと訪ねては、悪魔を追い払い、聖ニコラウスのお恵みをいただく愉快な騒ぎを繰り広げます。行列の先頭に立つのは、全身をムギワラで覆った奇妙キテレツないでたちの人たち。頭上にのせた高いワラ束からは、長井アンテナのようなものが経っています。彼らはシュワープと呼ばれ、元々は穀物の精を表していました。アンテナのようなものは「来年も勢いよく芽生えて下さい」という人々の願いが込められています。
続いて色々な扮装をした人物が登場します。カンテラ、ほこ槍、角笛を持つ夜警、ロバのような耳とあごひげが付いた面をつけた、聖ニコラウスのお使いのあごひげじいさん、星のついたヴェールを被る天使たち、そして聖ニコラウスです。手には長い司教杖を持ち、町の神父さんと並んで静かに歩みを進めます。
そして、ひん曲がった杖をついた乞食や大鎌を手にした死神も現れます。現世の営みのはかなさを世の人に警告するためです。そしていよいよ登場するのは、恐ろしい仮面をつけ、怖い声で脅かすクランプスです。強面ながら彼らは悪い鬼ではなく、「冬の悪魔」を追い払って、翌年の豊かな収穫をもたらしてくれると信じられています。日本のナマハゲにも似たクランプス達は、元気いっぱいに飛んだり跳ねたり、そこら中を走り回り、悪魔を追い払うしぐさをします。冬が長く、寒さも厳しいアルプス地方では、まだ文明の利器がなかった昔は、山村の人々にとって冬は恐ろしいものでした。それだけに、村人たちは恐ろしい面をつけて「冬の悪魔」を家々から追い出し、村に入れないようにしようとするこのようなお祭りが生まれたのです。
クリスマスから公現節(1月6日)までの12夜
ラウネヒテにまつわる風習も神秘的です。これはクリスマスから1月6日までの夜のことで、その数は地域によって3~12日の間で異なります。地域によっては12月20日から21日にかけての1年で最も長い夜に、すでに "ローゼン "を始めます。
ローゼンとは、方言の「聞く」という言葉に由来します。この風習では人々は耳を澄ませてこれから起こることを知ろうとするものです。静かな十字路で何が聞こえるか耳を傾けます。音を解釈するのは簡単ではありませんが、例えば幸せな歌声が聞こえてきたら結婚式が間近に迫っていることを示し、一方、ノコギリの音は、死が迫っていることを知らせてくれると言われています。
薫香をまく冬の風習
ラウネヒテの語源はおそらく煙です。そして実際に特に農村地帯では、冬になると煙を炊くことは最も広く行われている異教徒の風習です。クリスマスから1月6日のエピファニーまでの間の少なくとも一夜は、家の中や厩舎に煙を撒きます。
悪い影響から動物を守るために、できれば香りのある材料を一緒入れます。なぜなら、真夜中に動物は人間の言葉を話し、未来を語ることができるようになるとされているからです。面白そうですが、動物の言うことに耳を傾けてはいけません。そうしないと、人は死ぬ運命にあると言われています。 最悪の事態を回避するために、人々は煙を炊くだけでなく、主に聖母マリアの絵が描かれた小さな紙を飲み込みます。