力と伝統
ザルツカンマーグートでは伝統が息づいています。伝統は、音楽、工芸、風習、演劇、文学から観光業に至るまで、多岐に及んでいます。伝統を理解するには、それがどのように発展してきたか、どのような権力がこの地域を形成し、新たな行動様式や新たな習慣を形作ってきたかを振り返ることです。
1985年以来、「欧州文化首都」の称号はヨーロッパ各地の都市に与えられてきました。オーストリアではこれまでに2003年にグラーツ、2009年にリンツが指定されました。2024年、オーストリア・アルプスの地方都市では初めてバート・イッシュル/ザルツカンマーグートが「欧州文化首都」となります。中心となるバート・イッシュルは、オーバーエステイヒ州とシュタイヤマルク州の他の22の市町村と共に、芸術、文化、商業、観光に焦点を当て、地域全体を新たなヨーロッパの文化地域として再構築します。
2024年には年間を通じ、また2023年に実施される一部のプログラムも含めて、150以上のプロジェクトがザルツカンマーグート全域で展開されます。これらのプロジェクトは、芸術パフォーマンスと展示会、講演会・対話などで構成され、持続可能な方法で、歴史と伝統を重んじながら、未来に目を向けています。欧州文化首都2024年のプロジェクトにより、ザルツカンマーグートは、塩に由来し、塩から始まり、塩によって豊かになり、塩と共に歩んできた伝統を未来への発展へと繋げます。
”文化は新たな塩”
ザルツカンマーグート地方には、様々な興味深い歴史、多くの魅力的な町や観光スポット、親切な人々、そして美しい風景があります。塩と水と木いう要素によって形作られたこの地域は、多様性に富み、塩の歴史が息づいています。7000年前、ハルシュタットで塩の採掘が始まりました。塩の交易により地域は潤い、豊かさ、国際的なネットワークが生まれました。近代になると、文化香る風光明媚なザルツカンマーグートは富裕層や権力者たちを引き寄せ、田舎の湖水地帯は夏の避暑地として人気の旅行先となりました。
ハルシュタットとダッハシュタインの歴史的文化景観は、ユネスコの世界遺産に登録されています。ザルツカンマーグート地方は、山、湖、川に囲まれ、コンパクトにまとまっていて、世界の他の多くの地域の中でも代表的な美しい山岳風景を誇っています。
工業化された北部と、観光や農業に適した南部という世界的に見られる地域分けが、この地方にもはっきりと存在します。欧州文化首都としてバート・イッシュル/ザルツカンマーグートは、ヨーロッパと世界が直面する政治的、文化的、観光/経済的、そして生態学的な課題に地域一丸となってどのように取り組んでいくかを示す実験地域でもあります。
<バート・イッシュル/ザルツカンマーグートは、タルトゥ(エストニア)とボードー(ノルウェー)と共に「2024年欧州文化首都」として2019年11月に選定されました。>
2024年欧州文化首都バート・イッシュル/ザルツカンマーグートのプロジェクトは、4つのポイントに重点を置いています。「力と伝統」、「流動する文化」、「ザルツカンマーグートを共有する - 旅はアート」、「地域に基づくグローバル化 - 新たな構築」の4つのプログラムで、自分たちの地域、ヨーロッパ、そして全世界の重要なテーマを扱い、未来への新たな推進力を打ち出します。
ザルツカンマーグートでは伝統が息づいています。伝統は、音楽、工芸、風習、演劇、文学から観光業に至るまで、多岐に及んでいます。伝統を理解するには、それがどのように発展してきたか、どのような権力がこの地域を形成し、新たな行動様式や新たな習慣を形作ってきたかを振り返ることです。
あらゆるものが存在する世界では、明確な文化的アイデンティティの必要性は理解されています。フランスの哲学者フランソワ・ジュリアンは、文化の本質は変化であると述べています。文化は立ち止まることはありません。習慣、伝統、共通言語は、一般に誰でも利用できるものですが、型にはまらない芸術形式や持続可能なコンセプトは、革新と未来に立ち向う新たな挑戦です。
観光は、19世紀に始まったこのアルプス地方の夏の休暇の伝統から発展したものです。多くの旅行者が憧れるザルツカンマーグート地方では、観光は最も重要なライフラインのひとつです。「ザルツカンマーグートを共有する - 旅はアート」は、観光産業が直面する多様な課題の解決と、質の高いサービスへの未来に向けた可能性を探求します。観光がもたらす副作用を見逃さず、アルプスの景観を保全し、夏と冬の旅行シーズンだけでなく年間を通じて、地域をどのように魅力的にできるか、地域全体で検証を求めていきます。
アルプス田園地帯の南北格差を補い、お互いに補完するような形を模索します。地域の労働市場がクリエイティブな潜在能力で豊かになり、教育水準の高い若者が地域外へ移住するのを抑制するには、ネットワーク化され、グローバルに働くことができる、つまり、モビリティとデジタル化の拡大が必要です。地元産業を再び生業として成り立つようにするための戦略を練り、また土地利用と合理的な建設計画を組み合わせ、教育や芸術のためのスペースを生み出し、持続可能性を追求することが大切です。若者たちが魅力的な住みよい場所にするため中心となって活動しています。
年間を通じて150以上のプログラムが用意されます。*詳細は決定された時点で追加します。
2024年1月19日(金)
文化首都全域に渡るプレビュー
1月20日(土)
- バート・イッシュル各所にてオフィシャルオープニング
- 「塩 - 湖 - 都市」展オープニング
- オスカー・シュトラウス作オペレッタ「自分が何を望むか知っている女性」、ベルリン・コーミッシェ・オーパー、19時~
1月21日(日)
- ワールドサロン「欧州は再編成されるのか?」
- オスカー・シュトラウス作オペレッタ「自分が何を望むか知っている女性」、ベルリン・コーミッシェ・オーパー、15時~
場所:バート・イッシュル各所
期間:2024年1月19日~21日
オペレッタ公演の会場:コングレス&劇場ハウス、
Kegelbahnstüberl im Kongress & TheaterHaus Bad Ischl、Kurhausstraße 8, A-4820 Bad Ischl
2024 年欧州文化首都を記念して、バート・イッシュル市立博物館が再設計されます。 この博物館は、岩塩精製産業で働いていたゼーアウアー家の旧邸があったところで、3 階建ての総展示面積は 800 ㎡です。町が保養地となって、1834 年にフランツ=カール大公と妻ゾフィー大公妃の家族がこの家の 1 階に引っ越してきました。1878 年に大公夫妻が亡くなった後、建物は 1982 年までホテル・オーストリアとして運営されました。この再構想では、展示内容、舞台美術、デザインにおいて、100 年の歴史を持ったホテルの外観を保ちながら、バート・イッシュル市とその周辺地域の特定の歴史を探ります。 展示の範囲は中世から帝政時代、そして現在にまで及び、国家社会主義の時代と戦後の記念文化形態が明確に含まれています。
場所:Museum der Stadt Bad Ischl、Esplanade 10, A-4820 Bad Ischl
時期:2024年5月4日リオープン予定
塩と水という重要な要素は、現代に至るまで、この地域全体を特徴づけています。2024年欧州文化首都の中心となる展示は、塩と水は生命の塩とみなされることに関連して、プロジェクトのテーマとなっています。水を題材にしたアートプロジェクトは、氷河の消滅と世界的な水不足の深刻化という喫緊の問題にも取り組んでいます。また、ザルツカンマーグート地域に豊富な木材がなければ、塩の抽出は不可能です。 このため、歴史を通して貢献してきた木という要素も展示の重要な部分を占めています。アートの展示は空きビル、空きスペースなどを利用して行われます。
場所:バート・イッシュル
期間:2024年1月20日~10月31日
観光は西洋のライフスタイルに不可欠なレジャーとなっており、建築環境、地域の経済循環、社会構造、気候変動に大きな影響を与えています。「観光について」展では、観光の社会的、計画的、生態学的、経済的側面を扱っています。もはや成長の使命にのみ従うだけではなくなった観光の成功した地元、および国際的な事例は、新たなアプローチを提供し、「生活の基盤をもはや破壊しない観光をどのように創造できるのか」という中心的な問いに貢献します。
期間:2024年9月~
場所:バート・イッシュル
主催:ウィーン建築センター
人々は自然とどう関わっているのでしょうか。科学は、気候変動、無慈悲な搾取、種の絶滅、自然災害といった終末論的なビジョンを私たちに突きつけています。 このプロジェクトではアーティスト達は、自然をテーマに、言葉や展示の形で様々な戦略やアクションを展開します。対象は世界全体ですが、ザルツカンマーグート地方の特殊な観点からもアプローチします。
場所:アルトミュンスター
期間:2024年8月30日~10月24日
エーベンゼーの旧強制収容所のトンネル内にある赤い糸と25着の特大ドレスで構成されたインスタレーション。塩田千春のコメント:「エーベンゼーの旧強制収容所のトンネルは超現実的な場所です。人間が作ったものなのに、そこに人間が入ってはいけないような気がします。この悲しい場所を空っぽの体で埋めたかった。・・・」
場所:エーベンゼー、トラウンゼー湖
期間:2024年
*写真はイメージ
EU・ジャパンフェスト日本委員会が1999年より開始した写真プロジェクトで、毎年ヨーロッパで活躍する写真家を日本に招き、現代の日本人と暮らしをテーマとして、日本の都道府県の姿を撮影し、翌年に欧州文化首都と日本で写真展が開かれます。2024年の写真展では、オーストリア人と他の欧州文化首都出身の写真家による作品で構成されます。
期間:2024年
*写真はイメージ
第二次世界大戦に盗まれ、(強制的に) 売却され、ザルツカンマーグート山中のトンネルに保管され、最終的に救出された物語は、文化の盗用というテーマに関して現代的な考察によって補足されます。
会場:レントス美術館、リンツ 期間:2024年3月20日~9月8日
場所:バート・アウスゼー 期間:2024年3月28日~10月27日
場所:ラウフェン/バート・イッシュル 期間:2024年4月20日~9月1日
塩は7000年にわたり、ザルツカンマーグートの町や人々を結びつけてきました。バーチャルミュージアムでは塩の採掘、輸送ルート、木材産業、ザルツカンマーグートでの生活と仕事に焦点が当てられ、Web アプリ(QR コードを使用)を通じて、様々な時代に浸り、地域を知ることができます。塩と林業、交通と民俗文化などは、先史時代、中世、過去数世紀に光を当てただけでなく、国連の持続可能な開発目標との関連に基づいて未来への展望を持って今日にも焦点を当てています。
期間:2024年3月~
Fête de la Musique(音楽祭)は毎年夏の初日である 6 月 21 日に、ヨーロッパの 300 以上の都市を含む世界中の 540 以上の都市で開催されます。2024 年には、ザルツカンマーグート「2024年欧州文化首都」の23 の市町村のアマチュアやプロのミュージシャン、州立音楽学校、音楽グループ、ブラスバンド、合唱団などが参加する重要なストリート・ミュージック・フェスティバルとなり、自家用車やレクリエーション交通を可能な限り削減し、自転車文化を活性化します。
場所:23の参加自治体
日程:2024年6月21日
2021年以来、ザルツカンマーグート地方の教会で行われている教会サウンド・フェスティバルを拡張したイベントで、2024年のフェスティバルの焦点は、即興演奏とオルガンのための初の国際ブルックナーコンクールです。コンクールの優勝者は、バート・イッシュルに新しく修復されたブルックナー・オルガンを使って無声映画を即興で演奏します。プログラムには、コンクールのファイナル戦、バート・イッシュルでの4回のコンサートと、2回の優勝者のプレゼンテーション、その他の町での4回のコンサートが並んでいます。
場所:バート・イッシュル
期間:2024年
食塩を生み出す場所はブルックナーの澄み切った音楽構成にも通じるところがあります。オーバーエステライヒ州立合唱団、リンツ・ブルックナー管弦楽団、指揮マルクス・ポッシュナーがエーベンゼーに集結し、特別なイベントでモテット、交響曲の楽章、即興音楽を演奏します。
場所:エーベンゼーのサリーネン・オーストリア会社
日程:2024年6月15日
「時間と空間の間の陶器」というタイトルのもと、グムンデンは伝統のデザイン以外にも現代的なテイストに取り入れながら、陶芸の町としての名声を守り続けています。プロジェクトではアートと手作り、理論と実践、ひらめきと技術革新が紹介されます。目的は、地域のみならず、世界中からの陶芸家との交流と、グムンデン陶器に理解と興味をもってもらうことです。
毎年 8 月の最後の週末には、ヨーロッパ中から 130 人の陶芸家がトラウンゼー湖畔の陶芸の町グムンデンに集まります。この時期、グムンデンは陶芸と陶芸家の出会いの場にしています。市庁舎広場と湖沿いの魅力的なエスプラネードは、ヨーロッパの陶芸家たちの舞台です。
場所:グムンデン
時期:年間を通し多くのイベント
産業文化遺産に関する情報、音楽、ガイドツアー、参加企業と地域の博物館のプログラム。欧州文化首都2024年に寄せて、ザルツカンマーグートの豊かな産業に光を当てます。トラウンゼー/アルムタールにある企業と博物館が産業文化を紹介します。
場所:トラウンゼー/アルムタール
期間:長い夜は2024年9月4日、工房と博物館のガイドツアーは2024年5月~11月