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    ガイルタール: ケルンテン州で最も美味しいものがある地域

    ケルンテン州のガイルタール渓谷では、純粋な楽しみには何にもまして必要なものが一つある、と人々は気付きました。それは時間です。その地域の特産品を味わうだけではなく、それらを生産するにも、時間が必要です。それゆえに、世界初のスローフード観光地域への旅は、伝統的な職人の技術を知る旅であり、熱心さと献身に満ちた生産者を訪ねる旅でもあります。

    ミヒャエラ・シュヴァルツ著

    いつものように予定より遅れて、ウィーンで車に飛び乗り、最初の1キロほどを走ってから、私はスナックを慌てて飲み込みながら大声で笑い出しました - スローフードか...。まったく、私向きのテーマだ。今、世界初のスローフード観光地域のガイルタール渓谷に向かっているのだから、なおさら結構だ。あそこの人々は、性急に楽しんでは、楽しさは半減することをよく知っている。また、生産物にいたっては完璧の域に達するには、たっぷりと時間をかけないといけないこともよく知っている...。
    ハンス・シュタインヴェーダーは、地域の特産品を献身的に生産している人たちの一人です。一族が何世代にも渡り所有してきた壮大なレルヒェンホーフの色彩豊かな耕作地帯に立って、彼は一体何がガイルタールのベーコンを特別に美味しいものにしているのか、私に説明してくれました。自家農場で育てた豚を使用しているというだけではなく、豚は彼自身が作った干し草を食べさせて育てるそうです。「飼料にクラナッハの花をたくさん加えるようにと、祖母によく言われました」と言ってシュタインヴェーダー氏は微笑みました。「そうすると、肉が滑らかになるのです」。クラナッハは田畑にたくさん生えている小さな花で、干し草を収穫する時に、一緒に刈り取られる草花です。この花は豚の飼料に香りを加え、従ってベーコンにも香りが付きます。ベーコン造りに使用される他の材料もすべて自然のものです。コショウ、塩、ベイリーフ、ジュニパーベリー、ガーリックは味付けするためのスパイスで、肉を燻製室に入れる前の保存加工に使われます。


    食材が旅した距離が物語る、地域の特産品の品質

    そうこうしているうちに、私の前に薄くスライスされ、キレイに飾りつけられた色々な生ハムやベーコンの盛り合わせが並べられました。完璧にそれらを楽しむために、ホスト自らお薦めの食べ方を教えてくれました。まずは、ほとんどクリームのよいうに柔らかいヴルツェルシュペックWurzelspeck(上等な豚の腹身で、赤身肉の縞入りの部分のベーコン)を食べ、次にもっとスパイスの効いたガイルタール・ベーコンを食べて、最後に、最高のハイライトであるワインシュペックWeinspeckを頂きます。このシュペックは、厳粛にスライスされて供されるまで、熟成に実に7年もかかります。造るにも、食べるにも、本当の意味で、まさにスローフードです。地方の食べ物に対する気持ちをよく表した、ちょっとした素敵な言葉があります。それは...、メニューは、主要な食材が産地からキッチンまで旅した距離を表す、というのです。察すると、肉はゼロキロメートがいいということでしょうか?

    グルメ地域、ガイルタール

    シシィ・ゾンライトナーのグルメ・アトリエ

    もしも、あなたがグルメ地域ガイルタールを旅していたら、ケチャッハ・マウテンにあるシシィ・ゾンライトナーのレストランに必ず出くわします。彼女は絵に描いたようなシェフで、意欲とノウハウ、ユーモアを見事に併せ持ち、一つまみの母親らしさで飾られたような素晴らしい人物です。私は、彼女の厨房で一緒に羊のチーズ団子入りのほうれん草スープを作り、それから、デザートには、軽くソフトなチーズ入りの生地を使った、ジューシーなアプリコット団子を作りました。賞を受賞したシェフの仕事を見るのは、楽しいものです。すべての身振り手振りが完璧に計算し尽されていて、無駄な動きが一切ありません。

    文字通り、彼女の郷土料理に対する情熱が伝わってきます。この地域は、3つの国 - ケルンテン州、スロベニア、イタリアが出会う所で、収穫を待つたくさんの宝を、母なる自然が与えてくれる場所です。通常彼女は、進んで新しい考えを受け入れますが、それでもやはり、シシィ・ゾンライトナーが、初めて彼女の娘シュテファニーに、ベジタリアンの料理を紹介した時は少し心配でした。今日では、シュテファニーはこのジャンルの食べ物の確固たる支持者に成長し、この料理を伝統料理を完全に補完するものと捉えています...。「非常に多くのレシピやスパイスがありますが、本当に食を豊かなものにしていますね」...。
     

    ハーブの香り高き世界

    スパイスと言えば、シシィの姉のインゲ・ダーベラーもまた、熟練したシェフで、本格的な野生のハーブのエキスパートです。真のパイオニアとして、1978年にオーガニック・ホテルの認可証を与えられたインゲ・ダーベラーは、ビオ・ホテル・ダーベラーの甘い香りが漂うハーブ園で、私を魅力的なハーブの世界へと飛び込まさせてくれました。言うまでもなく、サラダ用にと私たちが収穫したこれほど多くの植物の名前を、それまで私は聞いたことはありませんでした。そのほんの一部を紹介すると、ワサビ・ルー、オオバコの一種、チコリ、または、ヤグルマソウ、スベリヒユなどです。ストロベリー・スピナッチの小さな赤い果実も、カラフルなハーブのボウルに、いく種かの食用花と共に加えられました。インゲ・ダーベラーの指導の下ハーブ味のバゲットを焼くために、あるいは、ガーデンクレスとタイム、バーチシュガーとレモンの材料を混ぜ合わせたコーディアル(ハーブ飲料の一種)を作るために、数多くのゲストが彼女のもとに集まってきます。彼女がちょっと困った顔をしました...。「私のハーブ用のハサミが見つからないないの...」とため息をつきました。「本当に困ったはね。他の人にしてみれば、口紅を失くしたようなものよ」

    SlowFoodTravel Brotbacken
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    プロの肩越しに、その仕事を見る

    地域の料理に驚嘆する

    ガイルタール渓谷を訪れる人々は、その特産物の質の高さのためではなく、その内容の真正への憧れからそこを訪れます。その確かさは、熟練者がその伝統的な手仕事をする様子を見れば、ほとんど手で触れられるほど明らかです。ガイルタールを訪れる人々は、特にベーコンの塩漬け処理工程を見て感動します。見学者は自分たちでマリネの漬け汁を作り、燻製の過程を見学し、すべての行程が終わると、必要な熟成期間を終えた後、自分たちが実際に手作りしたベーコンのひとかたまりが6か月後に郵送されてきて感動するのです。

    また、ユネスコは未だに伝統的な製粉所で穀物を挽いているレーサッハ渓谷のパン作りを、「無形文化財」として認定しました。

    よく言われるように、「いいもの作るには、時間がかかります!」。このようなことに積極的に参加することは、とても楽しいばかりではなく、良い品質の、地球に優しい食品がどの様に生産されているのか、人々の理解がより明解になるので意義深いことです。



    ケルンテン州のスローフードについて

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